シリーズ【改正労働基準法】 VOL2
1 「時間外労働の割増率引き上げ」の概略
今回の改正により、時間外労働の割増率は次のようになります。
--------●大企業における時間外労働の割増率●--------
限度時間内 > 25%以上の割増率------- 義 務
限度時間を超え > 25%超の割増率------- 努力義務
1か月60時間を超える > 50%以上の割増率------- 義 務
--------●中小企業における時間外労働の割増率●------
限度時間内 > 25%以上の割増率 >>義 務
限度時間を超え > 25%超の割増率 >> 努力義務
ちなみに、【限度時間】とは、以下のとおりとなっています。
期間 --- 限度時間
| 1週間 --- 15時間(14時間)|| 1か月 --- 45時間(42時間) |
| 2週間 --- 27時間(25時間)|| 2か月 --- 81時間(75時間) |
| 4週間 --- 43時間(40時間)|| 3か月 --- 120時間(110時間)|
| 1年間 --- 360時間(320時間)| ( )内は、「1年単位の変形労働時間制」採用における限度時間です。
前述の割増賃金率を見てみると、今回のテーマである「時間外労働の割増率引き上げ」に関しては、「大企業か中小企業か」「努力義務を果たすか、果たさないか」という2点が、ポイントになります。
①大企業or中小企業
中小企業に対しては、「50%以上の割増率引き上げ」に関する規定の適用は、当分の間、猶予されることになりました。したがって、「大企業であるか」「中小企業であるか」によって、企業の対応がだいぶ異なることになります。(「当分の間」とは、「3年間」と考えられています。)「大企業・中小企業の判断基準」は、図のとおりです。
※ 業種は、日本産業分類で判断します。
※ 従業員数(常時)には、「臨時的に労働者を雇い入れた場合」「臨時的に欠員を生じた場合」などは含まれていません。
② 努力義務を果たすべきか
「限度時間を超える時間外労働=25%超」については努力義務となっているので、25%であっても労働基準法違反にはなりません。ただし、「25%」ということを企業側(経営者)が一方的に(勝手に)決めることはできません。労使協定(36協定)の締結など、そのプロセスが今まで以上に重要視されていくことが予想されます。
この内容については、次回以降に解説します。
③ 「60時間超の時間外労働割増率引き上げ」に対する就業規則の見直し
就業規則の見直しは必須
大企業については、「割増率=50%以上」が法律上義務付けられます。
したがって、60時間超の時間外労働をさせる可能性が低いような企業でも、就業規則の見直しは必要です。
割増率が50%なのか、それ以上(例えば60%)なのか、決定し規定化しなければなりません。
休日出勤との兼ね合い
時間外労働を「60時間まで積み上げていく過程」「60時間超を計上する過程」においては、休日出勤との兼ね合いに注意を要します。
今回の50%以上の割増率は、法定労働時間(原則1日8時間、1週40時間)を超えた時間外労働(60時間超)に対する義務であって、法定休日に労働させた場合の休日労働に対しては適用されません。
したがって、時間外労働が60時間を超えた後に法定休日に労働させたとしても、割増率は「35%以上」で問題ありません。
なお、1日8時間の所定労働時間で、土曜日・日曜日を休日としているような企業においては、その休日出勤した日が「法定休日」であるか、「所定休日」であるかによって、割増率の取り扱いが異なります。
つまり、時間外労働が60時間を超えた後に「法定休日」に労働させた場合には、先程の説明とおり「35%以上の割増率」で問題ありませんが、「所定休日」に労働させた場合には「50%以上の割増率」にしなければなりません。時間外労働を60時間まで積み上げるときも同様で、「所定休日」の場合には算入し、「法定休日」の場合には算入する必要はありません。
就業規則上で、法定休日(例えば日曜日)が明確であれば機械的に計上していくことができますが、法定休日が明確になっていない場合には、以下のような取り扱いをしなければならず、混乱を招く可能性が合います。
(※法定休日が特定されていない場合、暦週(日~土)の日曜日・土曜日の両方に労働した場合には、当該暦週における後に位置する土曜日が法定休日労働となる。)
従って、事務の煩雑さなどを考えると、就業規則上で法定休日を明確にしておいた方がいいかもしれません。
施行日のこと
今回の改正労働基準法は、平成22年4月1日から適用されます。
例えば、賃金計算期間が21日から翌月20日など、月をまたいでいる場合には、改定する就業規則の施行日や給与計算上の約束事を前もって確定しておく必要があるでしょう。(「施行日:平成22年4月1日、平成22年3月21日」など)
社会保険労務士 笹島 敏邦









